遺言執行者について
誰にでも訪れる相続問題。
もめない円滑な相続をするためには遺言書を書く事が有効です。
最近は、本やインターネット、テレビなどのメディアで遺言書に
関することが取り上げられる機会が増えました。
後に残された人がもめないようにするため、また、自分の最後の意思を
しっかり尊重してもらうため、自ら積極的に遺言書を書く方が増えています。
これはとてもいい傾向にあると思います。
ここで聞きなれない言葉がでてきました。遺言執行者(ゆいごんしっこうしゃ)です。
遺言執行者という言葉を初めて聞いた、あるいは、遺言執行者という言葉は知っていても
具体的にどういう人なのか分からない、という人が多いのではないでしょうか?
そこで、遺言執行者について解説します。
・責任をもって、遺言書の内容のとおりに遺産の分配を行う人のことを指します。
・相続財産の管理その他遺言の執行に必要な一切の事が出来ます。
・遺言執行者がいる場合、相続人は、相続財産の処分その他遺言の執行を
妨げる行為をすることが出来ません。
まず、遺産を遺言書のとおりにしっかり分ける(遺言を執行する)ためには、被相続人が亡くなった時点での相続人や
受遺者(相続人以外で財産をもらう人)の調査や、遺産の調査が必要になります。
遺言書で子の認知や相続人の廃除が書かれていた場合は、裁判所への手続きも必要になります。
そして、遺産が確定したら、預貯金・株式などの有価証券・自動車・不動産など、各種名義書換が必要になるのですが、
銀行であったり、証券会社であったり、陸運局であったり、法務局であったり・・・
いろいろと窓口が異なりますし、それぞれ必要書類も異なり、専門的な手続きが必要になる場面も多くあります。
遺言の執行と言っても、高度な法的判断が必要になる場合や、専門的な知識が必要になる場合が多くあり、
必要書類がとても多く、平日に何度も役所へ足を運ぶことになるため、遺言を執行するのにかなり負担になります。
なお、相続開始の日から10か月以内に申告しなければならず、
ゆっくり資料集めなどをしている時間は現実的になかなかありません。
そこで、相続人では早急に遺言書の内容を実現するのは困難であるという場合のために、
遺言執行者の制度があるのです。
例えば、お孫さんや、内縁の配偶者や、今の配偶者の連れ子や、
たくさん面倒を見てくれた息子の奥さんなど、
相続人では無いが比較的近い関係の人にも遺産を
分けてあげたいという方は多くいらっしゃいます。
こうした相続人ではない方に遺産を分けてあげたいという場合は遺言書を書くことになるのですが、
自分が亡くなった後、本当に遺言書通りに皆が動いてくれるのでしょうか?
不安が残りますよね。
実際、少しでも多くの遺産が欲しい相続人さんが遺言書の存在を隠してしまえば、
相続人以外の人には遺産は分配されなくなってしまいます。
「私の周りにはそんな悪いことをする人なんていません。」
「私の最後の意思なんだから、みんな必ず協力してくれるはず。」
多くの方がこのようにおっしゃいます。しかし、ふたを開けてみるとせっかく遺言書があるのに、
遺言書の内容が実現できていない場合があります。
遺言執行者を指定しておけば、相続人は、相続財産の処分その他遺言の執行を妨げる行為をすることが
出来ないので、確実に遺言内容を実現することができます。
一昔前までは遺産は長男が引き継ぐものだというような慣習があったと思います。
しかし、今は核家族化が進み遺産は長男が引き継ぐものだというような慣習は無くなりました。
遺言を遺される方が、「長男なのだから多く遺産を受けついでも、誰も文句は言わないだろう」
と考えて、長男に多く遺産を分けるような遺言を書いてもめるケースが多くあります。
遺言は、遺言書を書かれる方の最後の意思を尊重するものなので、特定の相続人に多くの遺産を
分けたいのであれば、そのような遺言も有効です。
しかし、もめないように、遺言執行者を指定しておいた方が無難と言えます。
事業を営んでいる人が遺言書を書く場合、自社株式や事業用不動産など、事業を引き継ぐ相続人に
多くの遺産が分配されるといった場合が多いと思います。
また、相続人の中に事業を引き継ぐ人がいなかったら、相続人以外の事業を引き継ぐ人に
事業用の機械などの遺産を分けることもあるかと思います。
このように、事業を営んでいる人が遺言書を書く場合、もめる遺言内容になる場合が多く、
その遺言執行はさらに難航する場合が多いので、スムーズな事業承継のためにも
遺言執行者を指定しておくのが良いでしょう。
遺産の種類が多く、その分け方も細かく指定しているような場合は、専門的な手続きが多くなりますし、
しっかりとした財産目録を作成しなければトラブルになる可能性が高いため、
専門家を遺言執行者として指定した方が良いでしょう。
また、遺言書というのは財産を分けるだけでなく、子の認知や後見人の指定、相続人の廃除といった、
裁判所に対する手続きが必要となるものもあります。
このような身分行為に関する遺言や裁判所に対する手続きが必要な遺言は、もめる可能性が
高いばかりでなく、高度な法律知識が要求されるので、
法律の専門家を遺言執行者として指定した方が良いと言えます。
遺言執行者を指定しなかった場合、基本的には相続人が遺言内容を実現することになるのですが、
相続人が高齢者のみで、あまり動き回れない場合や、相続人の中に昼間役所などに頻繁に
回れる人がいない場合は、遺言執行者を指定しておいたほうが良いでしょう。
相続手続きは、"もめない"、"損をしない"という事はもちろんなのですが、
"なるべく素早く"というのもポイントになってきます。
相続税を納めなければならない場合はもちろんの事、そうでない場合でも、
遺言内容を実現する前に次の相続が起きてしまうと、手続きがさらに複雑になってしまいますので、
早めに遺言内容を実現することが重要になってきます。
相続人がいない場合は、遺言書で遺産を受け取る人などを指定していないと、
せっかく残した遺産が国のものになっていまいます。
相続人がいない場合、遺言書で遺産を福祉施設などに寄付したいという方が多くいらっしゃいます。
そのような場合は、遺言内容を実現する人がいないわけですから、
遺言書で遺言執行者も指定しておかなければ、せっかくの遺言書も意味がなくなってしまいます。
遺言書の内容がそれほど不公平なものでない場合でも、相続人同士の仲があまり良くないと
遺言内容の実現が困難になる場合があります。
例えば、遺言書があったとしても、貸金庫を解錠したり、被相続人の預貯金の名義を書き換えるためには、
相続人全員で銀行に行かなければならなかったり、
あるいは相続人全員の戸籍と実印と印鑑証明書を要求される場合があります。
相続人同士の仲が悪いと必要書類がなかなかそろわなかったり、
連絡を取り合っているうちに結局もめてしまうという場合があります。
このような場合は、相続人ではない第三者が間に入って手続きを進めるだけで、
あっけないほど円滑に解決することが多いのです。
ですから、相続人同士の仲があまり良くない時は、
あらかじめ遺言執行者を指定しておくのもひとつの手でしょう。
最後に、何度も言っておりますが、相続とは非常にもめやすいものなのです。
たとえ相続人同士の仲が良く、円満に話がまとまりそうだとしても、
残念な事に相続人の配偶者など、直接相続には関係のない人が横から
口を出してきて話がまとまらなくなるというような事も多々あります。
もめない相続を実現するために「遺言書」を書き、
もめない相続を確実なものとするために、
「遺言執行者」を指定してみてはどうでしょうか?
遺言執行者は、遺言書の中で指定する方法と、相続開始後に家庭裁判所に選任の申し立てをする方法があります。
遺言執行者は相続人が遺産を処分したりしないよう、
相続開始後なるべく早く遺産を確保し財産目録を作成すべきであります。
家庭裁判所に選任の申し立てをすると時間がかかっていまいますので、遺言書を書かれるのであれば、
遺言書の中で遺言執行者を指定しておくのが良いでしょう。
実は遺言執行者は、未成年者と破産者以外なら就任することができます。
特に資格などは必要ありません。相続人の一人でも構いません。
しかしながら、相続人の中から指定すると他の相続人が不公平感を感じ、
うまく遺言執行ができない場合がありますし、遺言の執行には高度な法的判断が要求される場面が
ありますので、弁護士や司法書士など信頼できる法律専門家を指定するのが良いと思います。
遺言執行者選びのもうひとつのポイントとしましては、なるべく若い専門家を指定しておくということです。
当然のことながら、遺言書を残した人より早く遺言執行者が亡くなってしまったり、
引退してしまったら、意味がなくなってしまうからです。
一人ではなく、遺言執行者を二人指定しておくのも良い方法です。
当事務所では複数の若い司法書士を遺言執行者として指定していただく事も可能です。
当事務所では、当事務所で遺言書を書かれた方限定で、通常よりも安い報酬で遺言執行業務をお受け致します。
さらに、通常、遺言執行業務は遺言執行者としての報酬とは別個に各種資料収集の報酬や各種名義書換の報酬が
必要となるのですが、当事務所で遺言書を書かれた方限定で、相続関係資料の収集や、
不動産名義書換(相続登記)の報酬を無料とします。
(実費は別途です。また、裁判になった場合の報酬、遺言執行後の相続税申告は別途になります。)
当事務所で遺言書を書く際にはしっかりと面談をするため、相続関係や財産関係を事前に
ある程度把握できますし、遺言者の想いを直接聞いているため、遺言の執行が行いやすいからです。
また、当事務所は相続・遺言だけでなく、調査・測量など不動産のプロでもありますので、
円滑に手続きを進められる結果、不要なコストを抑えられるのです。
報酬について詳しく見る
遺言執行者の業務と似たもので遺産整理業務があります。
遺産整理業務は、遺言書の作成及び遺言執行者の指定をしないまま相続が開始してしまった場合に、
相続開始から、もめるリスクの高い遺産分割協議書作成までを、一括して行う業務です。
しかし、遺産整理業務と比べると、遺言執行者の業務のほうが、サポートできる範囲が広いですし、
トラブルが起こるリスクはより低いです。また、当事務所で遺言書を作成された方の遺言執行者報酬は、
遺産整理業務の報酬よりお安くなりますので、当事務所で遺言を作成される方は、
遺言執行者の指定を是非ご検討ください。
残念ながら、遺言書の作成及び遺言執行者の指定をされないまま、
相続が開始してしまった場合は遺産整理業務をご検討ください。
遺産整理業務について詳しく見る。